
業種:行政自治体
事業規模:430人
利用用途:
・給与明細表の作成
・補助金申請後の交付通知書の出力
・個人情報ファイル簿・個人情報取扱事務届出の法対応で活用
直方市では、令和3年より、市を挙げたデジタル・トランスフォーメーション(DX)の推進に取り組んでいます。この取り組みの一つとして、令和5年にkintoneを導入するとともに、kintoneと合わせて活用ができるレポトンを導入して、全庁での業務改善の取り組みを開始しました。「DX推進部署の職員ではなく、各部署の職員がアプリをつくる」というスタンスのもと、各職員が自作したアプリは全70個にも及び、様々な部署の業務において効果を実感されています。直方市のDX推進の歩みと、各職員が自作したアプリの具体的な利用方法・効果についてお聞きしました。
| ポイント |
| 各職員が構築担当者として活用できるレポトンの柔軟な設定 |
| 法対応や補助金申請など行政特有の業務フローにレポトンを活用 |
| 必要なアプリは現場の自作で!DX推進係は庁内の伴走役に徹底 |
目次
- 導入背景(「現場ごとに設定アカウントを柔軟に用意できること」が決め手)
- 利用方法1(給与明細表の帳票出力に活用)
- 利用方法2(補助金申請後の通知書の交付に活用)
- 利用方法3(個人情報ファイル簿・個人情報取扱事務届出作成に利用)
- 社内浸透(ワーキングチームの設置と徹底した伴走で16個のアプリが完成)
- 導入効果(職員自作のアプリで今後へ繋がる効果を実感)
- 今後の展開(市役所の「サービスモデルの変革」を目指してさらなるDXを)
導入背景:「現場ごとに設定アカウントを柔軟に用意できること」が決め手
直方市について教えてください。
(企画経営課DX推進係 係長 品川氏)
直方市(のおがたし)は、福岡県の北部に位置する人口55,000人程の自然豊かなまちです。3月末から4月上旬にかけて行われる「のおがたチューリップフェア」や夏に開催される「花火大会」など、季節ごとのイベントが人気です。
市の近年の取り組みとしては、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた計画「未来へつなぐ「ひと・まち・自然」~Road To 2030 Team NOGATA~」が、SDGsの達成に向けた優れた取り組みとして認められ、令和4年度に国(内閣府)から「SDGs未来都市」に選定されています。また、行政内部に加え、地域全体での情報化に向けて、デジタル・トランスフォーメーションの推進に積極的に取り組んでいます。
私が所属する企画経営課DX推進係は、DX推進における市長をはじめとする「トップ層と現場を繋ぐハブ」として、全庁のDX推進の調整役を担っています。


レポトン導入前の課題を教えてください。
(企画経営課DX推進係 係長 品川氏)
本市の人口は、今後30年間で2割程度減少することが予想されており、必然的に職員数の減少も予想されるところです。しかし、市役所の業務は年々多様化・複雑化しており、それに伴い業務量も増加しているのが実状です。この現状に対応するためには、デジタルを活用したDXの推進が欠かせません。
直方市では、令和3年1月に庁内横断の組織として「直方市DX推進本部」を立ち上げ、同年4月にはDX推進の専門部署としてDX推進係を新設して、組織的に市のDXの推進に取り組んでいます。直方市では、DX推進の方針として、①「内部事務の変革による生産性の向上」、②「外部向け行政サービスの変革による市民・企業の不経済発生の防止」、③「地域の情報化による市民所得の向上」の3つのビジョンを掲げています。
しかし、これまでは、主に①、②の部分において、行政内部の事務に時間を取られ過ぎており、③の取り組みに本格的に着手できていないという課題がありました。
これまでにも、文書事務や財務会計への「電子決裁の導入」や、「市の手続きのオンライン化の推進」など、全庁的なDXの推進に取り組んできましたが、それでも、市の多種多様な業務においてまだまだ改善すべき課題が多くある状況があり、さらなる取り組みが必要と考えていました。

サイボウズ社の自治体応援プログラムを知ったきっかけや参加の経緯を教えてください。
(企画経営課DX推進係 係長 品川氏)
直方市では、DX推進に係る外部のアドバイザーとして、森戸裕一氏(一般社団法人日本デジタルトランスフォーメーション推進協会代表理事)に参画いただいています。森戸氏より、本市の課題の改善に向けては、「ノーコードツールの活用が効果的」とのアドバイスをいただき、活用に向けた調査を行っていました。
ちょうどその頃、サイボウズ社が自治体DX応援プログラムというキャンペーンを実施することを知り、直方市として手を挙げました。kintoneを活用することで、業務プロセスの改善や情報共有の円滑化、属人化の防止など、各部署の多様な業務課題に迅速に対応することが可能になるのではないかと考えたためです。
色々なツールの中でレポトンに決めた理由を教えてください。
(企画経営課DX推進係 係長 品川氏)
サイボウズ社が運営する自治体向けコミュニティ「ガブキン」が提供するkintoneやプラグインの教育コンテンツである「ガブキンセミナー」でレポトンを知りました。kintoneに蓄積したデータを、各部署が自由に組み合わせてPDFやExcel形式で出力することができるレポトンは、この取り組みを成功させるために必須のプラグインであると考え、活用することにしました。
類似の他社製品とも比較しましたが、PDFのほかExcelも使えるという点も魅力的でしたし、何よりレポトン専用のアカウントを用意する必要がなく、kintoneのアカウントがあれば誰でも設定から出力まで利用できることが一番の決め手です。
直方市では、kintoneの活用推進に対し、DX推進部署がアプリを構築して各部署に渡すのではなく、DX推進部署が伴走支援を行いながら「業務課題を抱えている各部署の職員自身がアプリを構築して業務改善を行う」ということを基本としています。そのため、設定ができるアカウントが限られる製品では取り組みを行うことが難しいと考えていました。また、レポトンは設定も非常に簡単のため、各部署のkintoneの利用の後押しができると思いました。

レポトンの利用状況について教えてください。
(企画経営課DX推進係 係長 品川氏)
これまでに全庁で構築した約70個のkintoneアプリのうち、約20個のアプリでレポトンを活用しています。また、その中の11個のアプリについては、常時稼働しているアプリでレポトンを活用しており、様々な部署の業務改善に役立っています。
利用方法1:給与明細表の帳票出力に活用
“給与明細表”の利用方法とその効果を教えてください。


(人事課職員係 主査 高木氏)
2010年頃からAccessで構築した給与明細システムを使用していたのですが、サーバーの保守期間終了に伴い、代替案を検討していました。しかし、新たにパッケージシステムの導入を行うと数百万円単位でのコストがかかることがわかり、別の方法を調査していました。
以前のフローでは、給与計算システムからCSV出力を行い、必要なデータのみをExcelで加工して給与明細作成に必要なデータの準備をしていました。最終的にその複数のExcelデータを基礎データ、給与データ、口座データとしてそれぞれAccessに取り込み、給与明細をつくるという流れで、多くの手間がかかっていました。
kintoneは、DX推進係と協力しながらアプリを構築しました。レポトンの設定も簡単でしたし、以前の給与明細と同じフォーマットで作成ができるため、給与明細を見る側の職員にはそこまで違和感はなかったと思います。本市では、まだkintoneのアカウントが全職員にあるわけではないため、職員が自分のデータのみを閲覧することができるプラグインと組み合わせることで、レポトンのPDFが見れるような仕組みにしています。
この仕組みによって、給与明細を職員自身のスマートフォンから確認できるようになりました。以前は500名以上のデータ処理を毎月行い、エラーも多く悩みがつきませんでしたが、今では大幅に工数を削減することができ、業務効率化に成功しました。

利用方法2:補助金申請後の通知書の交付に活用
“通知書”作成での利用とその効果を教えてください。


アプリの構築担当者である 商工観光課 岩崎氏
(商工観光課工業振興係 主任 岩崎氏)
直方市では既に汎用的なオンライン申請ツールがありましたが、本業務においては、申請金額の計算を申請者自身で行う必要があるなど、申請の内容が複雑であり、汎用的なオンラインツールではオンライン化が困難でした。そのため、本業務については、kintoneを活用してオンライン化に対応することにしました。
令和4年度に、物価高騰による燃料油等の価格高騰対策として、「燃料油等価格高騰対策補助金」制度がスタートしました。同年は年間250件ほどの申請があったのですが、まだkintone導入前だったため、全て紙の申請書で対応を行いました。
紙の申請では、申請者が内容を確認しながら、交付対象となる金額を申請者自身で計算し、記載する必要があります。申請者の手間がかかることはもちろん、計算に誤りがないかのチェックに時間を要するなど、職員にとっても負荷がかかっていました。また、申請後に審査を行い、決定通知書を発行する際も紙ベース・手作業で行っており、処理に多くの時間がかかっていました。
令和5年度の申請は、kintoneでアプリを構築したうえで、手続きのオンライン化に対応しました。kintoneの標準機能では外部からデータを自動登録する機能はないため、そこはフォーム機能を持つプラグインを活用しました。複雑だった手計算による交付対象金額の算出も、kintoneの自動計算機能の設定を活用すれば入力者自身で計算する必要がないため、申請の難易度を下げることができました。この年は、650件ほどの申請をお受けしたため、申請件数は前年度の2.5倍になりましたが、アプリの活用により同じ職員数で対応することができました。また、同年の申請については、約半数の方が紙の申請を利用されたのですが、紙で受理した申請についても、AI-OCRでデジタルデータへ変換したうえでkintoneへインポートして登録することで、kintone上での一元管理を可能にしました。
この仕組みにより、kintone上に全ての申請データが登録されることになるため、決定通知書の交付時にはレポトンを活用してPDFデータを作成することができます。ボタンひとつでkintoneのデータを元に決定通知書を作成することができるため、非常に重宝しています。通知書出力後は、マイページ機能を持つ別プラグインとの組み合わせで、決定通知書を申請者宛てにオンラインで送付し、交付まで完結できる仕組みにしています。


利用方法3:個人情報ファイル簿・個人情報取扱事務届出作成に利用
個人情報ファイル簿・個人情報取扱事務届出作成での利用とその効果を教えてください。


(総務課総務法制係 主任 林氏)
個人情報保護法の改正により、全庁から集めた個人情報ファイル簿等のデータを市HPに急ぎ公開する必要がありました。
従来の方法では、毎年ファイル簿等のデータはExcelで各課から受理する方法で行っていたため、それを集約、整理したうえでHP上に公開するとなると、膨大な時間がかかることが想定されました。
他の業務もある中、円滑に対応するために、本業務にkintoneを活用することを決めました。
Excelからkintoneへ乗り換える際には、なるべくExcelの項目の並び方から変化がないように注意して構築を行いました。様々なプラグインの情報も調べ、積極的に活用を進めていきました。kintoneにデータを移行したことで、最終的にレポトンの出力ボタンを押下さえすれば、PDFが作成されます。そのPDFはそのままHP上に掲載が可能なフォーマットとしているため、すぐにHPにアップロードすることができます。大幅な効率化とともに、法改正にも適切かつ迅速に対応する仕組みをつくることができました。

社内浸透:ワーキングチームの設置と徹底した伴走で16個のアプリが完成
レポトンの社内展開方法について教えてください。
(企画経営課DX推進係 係長 品川氏)
キャンペーンの間に、なるべく多くの職員に実際にkintoneに触れてもらい、業務に活用してもらいたいと考えていました。そのため、キャンペーン採択の翌月の令和5年6月にはkintoneのアカウントを用意し、7月にはkintone活用に向けた操作説明会を行いました。操作説明会について庁内イントラネットで全庁に周知を行ったところ、約50名の職員から申し込みがあり、ノーコードで業務改善が可能なツールであるkintoneへの関心が高いことを実感しました。
8月には、kintoneで業務改善を目指す庁内横断の取り組みとして、「kintone活用推進WT(ワーキングチーム)」を設置し、手を挙げた16名の職員とともに、取り組みを行いました。WTでは、4か月間の期間を設け、DX推進係が伴走しながらグループに分かれてアプリの作成や活用方法を習得していきました。WTでは、時間内に全グループがレポトンを活用したアプリを作成する回も設けるなど、より多くの職員にkintoneとレポトンを始めとしたプラグインの可能性を知ってもらう機会をつくりました。
WTの目標は、参加職員が所属する部署の業務をkintoneを活用してアプリ化し、業務改善を実現することであり、前述したアプリもこのWTの取り組みから生まれたものです。結果的に、参加した16名それぞれが構築したいアプリができるまで、WT終了後もDX推進係も交えて検討を重ねていきました。
レポトンの社内浸透で工夫されたことがあれば教えてください。
(企画経営課DX推進係 係長 品川氏)
WTでの活動も含め、令和5年度に庁内で構築したアプリについて、職員が自席のPCから確認できるアプリ(kintone構築事例共有アプリ)を作成し、庁内イントラネットで共有を行いました。
このアプリでは、構築したアプリの名称や活用方法に加え、どのプラグインを使用したかなども確認できるようにしています。また、利用できるプラグイン一覧アプリなども共有し、職員が利用しやすいように環境を整えました。これらの取り組みにより、プラグインの認知度向上や、活用イメージを職員と共有することができていると考えています。

導入効果:職員自作のアプリで今後へ繋がる効果を実感
レポトンの導入効果について教えてください。
(企画経営課DX推進係 係長 品川氏)
kintone及びレポトンは、自治体の様々な業務、特に、これまで課題と感じていた行政内部の事務の効率化に、大きく寄与していると感じています。
この効果を生んだ要因は、DX推進係が主導したというよりは、各部署が日々取り組んでいる業務で課題と感じていたことに対し、その改善に向けて自発的に取り組んだことが大きな要因だと考えています。ノーコードで業務アプリをつくることができるkintoneの柔軟性と、レポトンを含めたプラグインの多彩な機能を活用し、業務課題を持っていた各部署の職員自身がアプリ化を行うことで、様々な業務の改善に繋がっていると感じています。
これは、今後の直方市のDXの推進においても、大きな一歩になると考えています。
今後の展開:市役所の「サービスモデルの変革」を目指してさらなるDXを
今後の展開について教えてください。
(企画経営課DX推進係 係長 品川氏)
今後は、これまでの取り組みに加え、DXビジョンの③「地域の情報化」に向けた取り組みにもっと力を入れていきたいと考えています。今年度、kintoneとプラグインを活用して、災害時の情報共有を円滑化するための「災害時情報共有プラットフォーム」を構築したのですが、ここで集約した情報は、プッシュ通知というかたちで市民の方とも共有できるようになっています。この仕組みも市職員が自作したのですが、将来的にはこのような市に蓄積されるデータを地域で活用できる仕組みを構築して、「地域の情報化」に繋がる取り組みに注力していけたらと考えています。
(主事補 三戸氏)
kintoneの一層の活用推進に向け、今年度は若手職員を中心とした「活用学習会」を開催したいと考えています。kintoneを活用した取り組みの輪をさらに広げていきたいです。

(係長 品川氏)
直方市にとっての行政DXとは、DXを通して「市のサービスモデルを変革・転換すること」と考えています。これはどのようなことかと言うと、例えば、今市民のみなさんに「直方市役所って何やっているところ?」とお尋ねすると、多くの方が「証明書を発行してくれるところ」や「色々な手続きをするところ」と答えられるのではないかと思っています。これが、市が「サービスモデルを変革・転換」した先には、市役所は「まちづくりを考えていくところ」や「くらしを豊かにするところ」という答えに代わっていく、これこそが、直方市の行政DXの目指す姿であると考えています。その実現に向けて、引き続き取り組みを進めていきたいと考えています。
株式会社ソウルウェアでマーケティング部に所属している中村です。
ソウルウェアでのマーケティング業務のかたわら、副業にもチャレンジしています。またプライベートでは二児の母でもあります。
忙しく働く毎日ですが、より生産性を高くかつ余白も生み出すことができるような働き方を目指して日々精進しています!未来の働き方のヒントを発信していけたらと思います。


