
シンガポールでの取材を通して出会った現地在住の日本人の方々に「シンガポールのここがすごい!ここが変!」について聞いてきました。取材者である広報サリーの感想も交えて、記事にまとめていきます。
シンガポールからの目線を通して日本を見ると、普段私たちが感じている日本の見え方とはまた違った角度からの日本を感じられるかもしれません。
今回お話を聞かせてくれた人たち

株式会社Vivid Creations 池田恩(いけだ めぐみ)さん
今回のシンガポール取材発端の人。
インタビュアー広報サリーの、元職場の先輩。
直近3年は海外で生活しています。

株式会社ユーザベース兼 NewsPicks編集部 チーフアジアエコノミスト
川端 隆史(かわばた たかし)さん
One&Coで出会い、たくさんのお話を聞かせてくれました。
アジアの政治や経済を知り尽くしたまさにスペシャリスト!
生活に密着するIT。効率化が一番?

シンガポールはIT大国。
日本ではとくに年配の方はIT化に抵抗があったり上手く使いこなせない例も多いですよね。シンガポールではITが生活に浸透しているイメージ。
年配の方も使いこなしているかは別として、少なくとも「抵抗はない」イメージです。
夜ご飯に街で人気の飲茶屋さんへ行った時の様子。所謂「早い、安い、美味い」系のお店ですがここにもIT浸透を感じました。
受付はタッチパネルで客が自らチェックインし呼び出し番号が振られる。
写真には映っていませんが頭上のモニターに自分の番号が表示されると席に案内されるシステム。


席に着くと伝票に印刷されたQRコードからオーダーを送る。
ここまで店員の接客はゼロでした。
オーダーは客がQRを読み込んで自分の携帯でWEBサイト上から注文入力します。
オーダー画面は英語表記でしたが、メニューに料理の写真と番号が振られているので英語ができない人でもOKです。
別日に、マクドナルドを利用した時もオーダーから会計(現金での会計を除く)まで全て客がタッチパネルで行い、店員が接客したのはカウンターで商品の受け渡しのみでした。
システムによるオペレーションは日本よりも進んでいる印象。
「雇用機会の増加」よりも「効率化」や「無駄の削減」を重視している印象でした!
シンガポールのビジネススタイルは?

日本でいうLINEのような感覚で世界的に利用されているメッセージアプリ「WhatsApp」はビジネスなどオフィシャルな場でも活用されています。
私たちの会社でも顧客との”メール”でやりとりは日本に比べて圧倒的に少ないです。
社内も社外も情報共有はWhatsAppです。インボイスやファイルデータのやりとりもこれで済んでしまうのでメールとはスピード感が違います。
WhatsAppはシンガポール政府からの国民へのお知らせ(直近で言えば新型コロナウィルスの最新情報など)にも利用されています。
顧客への事前の資料共有も日本で働いていた時と違うかも。
事前に提案資料はWhatsAppで送っておき、印刷して持っていくことはあまりありません。環境への配慮にもなるし、お客さんのデバイスで手元で資料を開いてもらえば同じこと。
事前に送り目を通しておいてもらうことで会議の時間も無駄が省ける。
細やかなことだけど、効率重視の働き方が根付いてるなと感じます。
シンガポールは国土も狭く(東京都23区とほぼ同じくらい)、家賃も非常に高いのでシェアオフィスやSOHOを利用する企業が多くあります。
今回インタビューしたVivid CreationsもSOHOを利用していて、Vivid Creationsのオフィスの隣の部屋は一般の人が普通に住居用として利用していたりします。
(だからたまに住民の人が料理する匂いが、隣の部屋から漂ってくることもあるんだとか!)


隣の部屋は普通に一般の人が住居として利用しているらしい。

シンガポーリアンは結婚するまで基本的に親元で一緒に暮らしています。
家賃が高いからわざわざ一人暮らしをするということは少ないのです。
私のように海外から働きに来ている人や、単身で部屋を借りたい人はルームシェアをして家賃を折半する形で広い部屋に住んでいます!
1年を通して暑い国なのでマンションにはプール付き物件も結構多くて、少しリッチな気分にはなりますね(笑)

シンガポールの新型コロナウイルス対策は?
実は滞在した2月末は、新型コロナウイルスがアジアを中心に蔓延し始めていた時期でしたが現在のような状況になるとはまだ想像もつきませんでした。
イベントの自粛などは情報が囁かれつつも、両国の飛行機の往来などはまだ制限の無い時期でした。
私がシンガポールで見たコロナウイルス対策をレポートします!
*この後、世界中に新型コロナウイルスは感染範囲を広げ、各国で状況に応じた対応をしています。あくまで上記期間の、私が得た(見た)情報ベースということをご了承ください。
チャンギ国際空港では・・・
空港職員、とくに入国ゲートや保安検査場ではスタッフはみんなマスクをしていました。
それ以外は防護服などは無し。
(帰国した際の成田国際空港 出国ゲートのスタッフはみんな防護服を来ていました!)
街中の様子は・・・
ホテルのチェックイン時、オフィスビルなど建物に入る時の受付では必ず一人ずつ額にかざすタイプの体温計で体温が測られました。
その後、パスポートナンバーや最近の渡航歴を確認する用紙が配られ、旅行者に限らずローカルの人でも記入を求められていました。
ホテルによっては搭乗してきた飛行機の便名や座席も記入を求めれられるところも。

QRで読み込んだページにてそれぞれの渡航歴や体温を申請している様子。
オフィスやファッションビル、飲食店やスーパーなど至るところにサニタイザー(アルコール消毒液)が置いてあります。
日本ではアルコール消毒も早々に入手困難になってしまいましたよね。
シンガポールには一般の量販店などでもたくさん取り扱いがありました!

シンガポールでは感染防止策として『ソーシャルディスタンス』という他人との距離を一定に保つことを早くから徹底して取り組んでいました。
街中のスーパー、飲食店(屋台含む)、クリーニング店ですらも足元や椅子に境界線の役割を果たすテープが貼られ、他の人と一定の距離を保てるようになっています。

写真は、現地の土屋さんから提供いただいたもの。
街中の至る所に「安全な距離を保つこと」が掲げられ
テープで境界線が貼られています。

飲食店はテイクアウトのみとなっている。(飲食をした場合は”法律違反”となり罰則の対象)
写真はロックダウン以前のもの。

そしてこのソーシャルディスタンスは、国の”法律”として施行され厳しく取り締まられ、守らない人には罰則が課せられます。
「ソーシャルディスタンスアンバサダー」という、ソーシャルディスタンスを徹底させる役割を持つアルバイトも急遽できました。違反者をアンバサダーが通報し発覚させていく仕組みです。
こういった緊急事態において、スピーディーに法律が制定され実行されていくのは小国ならではの強みですよね。
土屋さんが送ってくれたソーシャルディスタンスについての現地新聞(英語)
日本でも、罰則を設けるか否かは別としてフードコートやスーパーマーケットなどでテープを貼り人との接触を抑止する動きは有効に働きそうです。
例えテープなどの目安が無くても、一人一人が気を配ってソーシャルディスタンスを実践していくことが大切ですね。
ただし、マスクをしている人の割合は街を歩いていても少なめ。3割〜4割くらいでしょうか。
「シンガポールは一年中、気温が30度前後の暑い国なのでマスクしていると息苦しいしな、、」と思っていると・・・

マスクは日本同様、早々に売り切れました。シンガポールの場合は特に、全てのマスクを輸入に頼っていましたから供給はあっという間に滞ってしまったんです。
手に入れたくてもみんな買えないんです。
*帰国後、土屋さんと連絡を取り合っていましたが、4月に入りマスクについては洗って再利用可能なマスクが1人1枚配布開始されたそうです。

シンガポールは、前回のSARSで感染者を多く出し大変な痛手を負いました。
日本でも東日本大震災以降、地震に対する警戒心や対応スピードは非常に強まりましたよね。
シンガポールでも感染症へのトラウマからその辺の対応は早いんです。
もともと外資で発展してきた国なので、感染症によって貿易にダメージが生じると国の経済にも大きなショックを与えます。
なので、公衆衛生、それからテロについては多民族国家として最も気をつけている部分なんです。
シンガポールの魅力、日本の魅力とは?

シンガポールは与党政府の権力がとても強い国でもあります。
企業は政府と結びつきが深いところも多いので、国民の暮らしに政府のコントロールが浸透しやすいというのもあると思います。
大規模なデモも禁止されているし、メディアの報道も自由ではありません。
でも一方で、国としての方針は足並みを揃えやすいのも事実。
今回の新型コロナウィルスへの対応もそうですが、国難が振りかかった時にリーダーがパッと方向性を決めて、そこに進んでいきやすいとは思います。

シンガポールの所謂「学歴社会」「実力主義」「効率重視」は目を見張るものがあると思いますね。
シンガポール政府は、ある程度冷酷にルールを決めて国を運営しています。
永住権を獲得できるのは端的に言えば”高学歴で稼ぐ”人材。
シンガポールでは学歴からある程度の生涯賃金を計算できてしまうほどです。
大学はエリートが進む道であり限られた人材しか行けません。
日本の私立大学のように偏差値の幅があり、自分のレベルに合った大学を探せるということはないんです。
アート活動やスポーツより、学力の高さが優先されて来ました。
この徹底ぶりがわずか50数年でここまで経済発展した理由でしょうね。
しかし最近は少し変わってきていて、サブカルチャーの醸成やスポーツ選手の育成なども力を入れているようです。
海外の良い物を取り入れながらここまで発展できたので、今度はシンガポールのオリジナルカルチャーを作っていく。そういう時代になってきたのだと思います。

シンガポールはこのように政治統制も取れていて、
海外の中では安全な国だしとても暮らしやすいと思います。
ですが私も含め、海外暮らしの長い友人はみんな、「老後は日本で暮らしたい」と言っています。
1つは、日本にはとても美しい四季と、折々の景色があること。
そして各都道府県によって全く表情の違う景色や文化があること。
これは他のどの国を探しても、日本だけだと思います。
年中暑くて、国土も小さなシンガポールにいると尚更実感しますね。
そして、日本人は礼儀正しく、歴史や文化も深い。
食のレベルの高さも他には無いと思いますね。
日本は値段に関わらずどこで何を食べても美味しくて安全な食事ができます。

日本独自の文化、歴史は世界に誇れるものです。
今、グローバル化が進み多くの日本企業が海外進出をしたり、世界の経済に追いつけ追い越せで進めています。
個人的には無理に背伸びをしたり、日本の伝統文化を諸外国に合わせなくて良いと思っているんです。
”島国ニッポン”は海外から見たら立派なブランドで、日本独特の文化を体験するために何百万円でも払う世界の富豪もいるほどです。
その良さは失わずに、日本も成長していけたら良いと思います。

シンガポールは多民族国家で多種多様な人種が住んでいるからこそ、統率するのにある種の強制力が無いとなかなか1つに束ねることが難しい。
例えばゴミのポイ捨て、電車内の飲食、スモーキングエリア以外での喫煙などは全て罰金の対象となります。
「ちょっと厳しすぎない?」と思っても、それくらいの厳しさがないとみんなが
ルールを守るのは難しいのかもしれませんね。
一方でバスなどで席を譲る人、子ども・老人が乗ってきた際に席に座るまで発車を待つ運転手など日常の些細なところで親切をたくさん垣間見ました!
日本と同様治安が良く、シンガポール人も割とゆったりしている方が多いそうです。
海外の暮らしを見て「日本ではどうかな?」と思いを馳せる良い時間になりました。

soulwareの広報担当、サリーです!「幸せな働き方」への情報を中心にソウルウェアの様々な取り組み、イベントの様子、たまには雑談などを発信していきます。