
※写真撮影の時のみマスクを外しております。
飲み屋がひしめく慶応仲通りの奥まったところに『原価BAR』はありました。ここはその名の通り、入場料を払えば原価でお酒が飲めるバー!共同経営者のうちの1人、柳谷智宣(やなぎや・とものり)氏は飲食店経営の他にITライターの顔も持っています。ご自身のITスキルを活かして小規模な飲食店では珍しいほど、ITのチカラで業務改善をされています。kinconeをkintone(提供:サイボウズ株式会社)と連携させて勤怠管理をしているというので、その活用方法を聞いてきました。
飲食店でkintoneを活用するまで
ー柳谷さんはITライターとして活躍もされながら、こちらの『原価BAR』の共同経営者でもありますよね。そもそも飲食店でkintoneを活用するまでをお聞きしたいのですが。
柳谷:もうITライターとしてのキャリアは20年以上になります。若い頃から一度はバーテンダーとして働くぐらい、もともとお酒が好きだったんです。でも飲食店で働くと、”みんなが仕事終わって飲みに出かける時間”が僕の労働時間になりますよね。それでは好きなお酒が極められないので、時間にある程度融通のきくライターとして仕事をするようになったんです。
おかげ様でこうして余裕ができ、もう1人の共同経営者との出会いもあって『原価BAR』を2011年にオープンすることができました。都内に複数店舗あったのですが、今はコロナウィルスの影響でこの三田本店のみで営業しています。
ーなるほど。お酒好きが興じてそういう働き方の選択になったんですね。今はkintone界隈でたくさんの記事を書かれて、ASCII.jpでは「kintoneマスターへの道」という連載も持たれていますね。
柳谷:はい。だから原価BARでも業務管理は「kintoneが絶対便利」ということはわかっていて。
だけど、導入だけして社内活用が全く進んでいない状態がしばらくありました。日々の業務で忙しいし、そもそもこの業界はIT活用に対してそこまで熱心じゃない人の方が多いですから。
コロナ渦で緊急事態宣言が出て、お店を時短営業するタイミングで時間的な余裕ができました。それで、みんなで勉強会をしてみようってことになり。
ー皆さん、前のめりで話は聞いてくれましたか?
柳谷:1人、プログラマーを志したことのあるスタッフがいまして。彼が積極的に興味を持ってくれて、kintoneをいろいろ触ってみたい!と言って動いてくれています。組織に1人、キーになる存在がいてくれると周りを巻き込みやすいですね。
でも、改めて時間をとってみんなで勉強したら「そんな難しくないじゃん」と、すぐに活用できるようになりましたよ。
ーkintoneでは勤怠以外にどんなことを管理しているんでしょうか?
柳谷:メインは売上日報や顧客管理です。スマレジと連携させていて、ゆくゆくは販売データを会員サービスに活用したいと考えています。注文データから摂取カロリーがわかったり、常連さんが一番頼んでるメニュー、使っている金額などもわかるので、人気メニューのランキング化やお客さん同士で「今月1番飲んだ人」を発表、なんていうお店のコンテンツとして活用ができたら楽しいですしね。
あとは物販管理や、集客のために始めたYouTubeのデータを蓄積していたりもします。
手間の解消だけでなく勤怠の意識も高めたkincone
ー勤怠管理についてkinconeにする前と後を教えてください。
柳谷:導入前は昔ながらのタイムカードです。それを月次で店長→担当者という順で確認しながら手動でスプレッドシートに転記し、印刷してから会計士に郵送していました。
kinconeは、スタッフ個人のSuicaなどICカードでタッチして打刻と交通費を登録しています。オーダー用にiPhoneが店舗にあるので、勤怠用にわざわざ端末を用意する手間もありませんでした。
店での勤怠管理用にわざわざ別のカードを支給したり、端末を持ったりという必要が無いので我々管理側はもちろん、従業員側もそれが楽でいいと言っていましたね。最近はモバイル Suicaを利用しているスタッフも多いので、それも連携可能なのは助かりました。
ーたしかに、アルバイトスタッフからしたら、勤務先の出退勤のために新しいカードを支給されるのは管理が面倒に感じますね。でも、社員ならいざ知らずバイトスタッフまで「月末の勤怠&交通費申請」意識できますか?申請漏れはどのように?
柳谷:うちは連絡用にSlackを使っています。Teams、Chatworkなども試した後どれがいいかスタッフに聞いたら満場一致でSlackって(笑)UIとか、使いやすさがフィットしたんだと思います。
ーへぇ、それでSlackに通知を流して申請を促しているんですね。
柳谷:はい。Slackはストック型の情報管理には向いてないので、そこは今後の課題でもあります。

このスタッフさんはモバイルSuicaを利用している。
集約した勤怠データはkintone上に蓄積されるので、あとは担当者がメールで会計士に送るだけ。毎月30分以上かかっていた作業が2、3分あれば済んでいるそうです。
ーお役に立てて良かったです!
柳谷:物理的な手間が減ったという点ももちろんいいんですが、副産物的な効果も感じています。
今まで(タイムカード時代)、信頼があるのであまり口うるさく勤怠について言ってこなかったんですが、そうするとなんとなくルーズになる瞬間があったと思います。打刻忘れ、遅刻、代理打刻するなど、やろうと思えばできてしまうので。
ICカード打刻にしたら自然とみんなちゃんとするようになりました。本人のICカードじゃなきゃ打刻できない、っていうのもありますしね。勤怠に対する意識が高まった、と感じています。
ーなぁなぁでやっていた部分をきちんとする、というきっかけになれたのなら、それこそ勤怠管理サービスとしては本望です!
原価BARについて
ー『原価BAR』について教えてください。店名からも他のお店とは少し違う感じがしますが…
柳谷:その名の通り、うちでは最初に入場料をいただいたら店内で提供する飲み物・食べ物は全て原価で提供しています。考え方としては飲食店というより、遊園地に近いですね。
「本当に美味しいお酒を手軽に”楽しんでもらう”」ということを大切にしてますから。
ーお酒って高いものは一杯何千円としますもんね。
柳谷:そう、それがうちでは何百円とかで飲めちゃうのでお酒好きなお客様にはとくに喜ばれますね。他ではお目にかかれない希少なお酒もたくさん置いてますから。
ーそんな希少なお酒は卸してもらうのも大変そうですが…。
柳谷:1杯何千円、何万円ってするお酒、他のお店ではなかなか頼めないですよね。でもうちは原価で提供してるのでお客様も頼みやすい。仕入れの回転がいいから、酒問屋も優先的に限定品だとか良いお酒を私たちに回してくれるんです。結果、それがまたお客様に喜んでもらえる。
ーいいループが生まれているんですね!そして、バーだけど食事メニューも多いですね。
柳谷:食事にも手を抜いていません。実際、よく美味しいとお褒めいただきます。もちろん調味料まで原価計算して提供していますよ!
持ち込みもOKです。持ち込み料もいただいてませんから。
ーすごい!今は時短営業中とのことですが、コロナウィルスが落ち着いた頃には是非お邪魔したいです。
柳谷:コロナ感染症対策は万全です。都の要請に全て従って、現在は営業しています。ランチメニューでの営業もしていますので、皆さんに足を運んでいただきたいですね。

原価BAR
店内で提供される飲み物・食べ物は全て原価。
大切な人と楽しくお酒を飲む時間を提供したいという思いから立ち上げられた。

柳谷 智宣(やなぎや・とものり)さん
原価BAR共同創業者。1998年からITライターとして、雑誌や単行本、ウェブ記事などを執筆している。お酒が大好きすぎて、海底熟成ウイスキーを扱うトゥールビヨンというベンチャー企業も創業。何足ものわらじを履いて、日々、奮闘中。
柳谷さんが執筆したkincone導入の記事はこちら
soulwareの広報担当、サリーです!「幸せな働き方」への情報を中心にソウルウェアの様々な取り組み、イベントの様子、たまには雑談などを発信していきます。